照り付けるような太陽の元、線香が薄く香る長く空に伸びていくような坂をお母さんとお父さんの間に並んで上っていく。今日はお盆休みで、隣駅のお寺にあるお母さんのおばあちゃんとおじいちゃんのお墓参りに来た。額から汗を流れるのを感じながら、まだ辿り着かないのかとスマホを取り出す。地図を見れば目的地には近くこのまま歩いていればもうそろそろ着くらしい。安堵しながらアプリを閉じて、待ち受けに表示していたカレンダーが視界に入った。

 校外学習から、一週間が経った。今日を知らせる日付とその周りには赤い字が並びお盆休みに入ったことを示していて、すぐ近く……月末の学校開始の文字に胃が重くなった。

「どうしたの萌歌、疲れちゃった?」

 花を抱えたお母さんがこちらを見る。お父さんは「日傘を持ってくればよかったかもしれないね」と額の汗をハンカチでふく。私は大丈夫だと伝えるために頷いて、歩く足に力を籠めた。

 校外学習の日、私は結局清水照道とともに早退をした。保健室の先生や萩白先輩と下山して、他の生徒や担任とは会わなかった。あの大雨はどうやら一時的なものだったらしく、清水照道以外は皆山頂にいて、校外学習は継続だったらしい。私は山のふもとで迎えに来たお父さんやお母さんと帰ることになったけれど、奴は保健室の先生と帰ることになっていた。

 両親が来ない清水照道に同情をして私の両親は車で送っていくことを提案したけど、奴はへらへら笑ってそれを断った。

 そうして、校外学習から時間はどんどん過ぎて一週間。夏休みに入っていなかったら、きっと次の日には清水照道によって私は馬鹿にされていただろうけど、今私は清水照道だけじゃなく他の奴らにも会っていない。奴は夏休み前意気揚々とクラスの連中と約束を繰り返し「満喫する!」なんてぎゃーぎゃー言っていたから、今頃「樋口俺が助けてやった」みたいな話を武勇伝としてぺらぺら話をし、馬鹿にしているのかもしれない。

 でも私はその場にいないし、夏休みが終わるまでまだ二週間はある。きっとその頃にはその話に飽きていることだろう。

 安堵したいけれど、どこか気分に重しが残る。私が清水照道によって巻かれたハンカチを持ってしまっているからかもしれない。私はハンカチを巻かれていたことをすっかりと忘れ、奴と別れてしまった。だから夏休みが始まればあいつに私はハンカチを返さなくてはいけなくて、それが夏休み終了への鬱屈としたような、嫌な気持ちを増す要因となっている。

 黙々と坂を上っていると、線香の香りが濃くなってきた。顔を上げると落ち着いた色の瓦が視界に入る。

「ああ、やっと着いた。」

 お母さんが息を漏らしてつぶやいた。ここに来るのは毎年だけど、相変わらず特に変わりのないどこにでもあるようなお寺だ。門を潜り抜け、三人そろって本堂で挨拶を済ませて、ひしゃくと桶を借りて、水場で水を汲んでいく。準備を整え霊園に足を踏み入れると、一面敷き詰めるようにお墓が並んでいた。

 お墓には、花が供えられているところ、お酒が供えられているところ、何もされていなくて、土で汚れているところと様々だ。少し湿った土を踏みしめ歩き、ぼーっとただお墓を眺めていくと、おばあちゃんとおじいちゃんのいるお墓についた。

 お母さんとお父さんは手を合わせお墓の掃除を始め、私も慌てて手を合わせる。お墓はわずかに土や強い風で飛んできた葉っぱがついたりしていた。その葉っぱを取りつつ、漠然とお墓を見つめる。