気が付いたら、明るい商店街にいた。

「私、確か宿の扉を開けてて……? 何で、こんなところにいるんだろう?」

全く見覚えのない、商店街にただ一人立っていた。本当にただ一人。
商店街は明るく、賑やかなはずなのに、誰も周りに見えない(・・・・・・・・・)のだ。

「頭でも打ったのかな?」

少し薄暗いので、灯りを付けることにした。

〔ライト〕

薄い光で照らされた、道は、少し不気味でもあった。
恐る恐る、進み、広場のような場所についた。ここなら、少し気が緩められる気がする。見晴らしがいい。魔物退治でも、こんなに緊張することはないのに。
今、とても心拍数が上がっている。

広場のベンチに座って、一息つくことにした。


トントン

「ん?」

トントン

誰かが、私の肩を叩いている。……ちょっと怖い。心のなかでは今の状況が理解できているはずなのだが、頭は整理できていない。どうか、人であってほしい。どうか!

「お姉さん、人間だね?」

「貴方は……」

大人? 人間? いや、狐のような耳と尻尾がある。もしかして、亜人?

「僕は、化け狐、つまり妖狐さ。君は?」

「私は、天野茶峰(あまのさみね)。貴女の言う通り、人間」

妖狐……じゃあ、亜人じゃない? じゃあ、あやかし……?

「ちょっと、見てて」

妖狐は、私の様子など気にせず、なにかを私に見せたいようだ。

シュウウゥゥゥ

「どう? これが狐の姿だよ」

狐……森で見たことがある狐そのものだった。あやかしだとは到底思えない。

「僕は、人間界で暮らしたいんだ。君は、これから何がしたい?」

あやかしが人間界で暮らす? 今まで、ずっと暮らしていたんじゃなかったの? あれは本当にただの言い伝えだったの?
私? 私は……もとの世界に戻りたい。

「私はもとの世界に戻りたい! と言うか、ここはどこなの!?」

「ありゃ、まだ、しっかり理解できてなかったのか……ずいぶん落ち着いていたから、すっかり、知ってたもんだと……」

一体、何がどうなっているの!?