「ねえ、聞いた? この近くの宿屋さんの一室の扉に、あやかしが住み着いてるって、噂になってるんだって!」

「へぇー。そうなんだ」

あやかしと言うものは、ただの言い伝えにすぎない。そんなもの、いると思っている方がおかしい。

「本当に、信じてるの?」

私はそう言って、席をたった。


実のところ、興味がないわけではないのだ。私は、好奇心に負け、噂の宿にたどり着いた。

「いらっしゃいませ~」

「すみません、噂になっていた部屋を借りたいのですが……」

「あぁ、最近何故か、人が寄り付かなくなってしまいまして……貴女様が来てくださって、うれしい限りです~!」

あんなに噂になっているのに、どうしてだろう? 私は、不思議に思わずにはいられなかった。そして、更に興味が湧いた。


部屋は、特に変わった様子はなく、それどころか居心地がいい。最近、旅ばっかりしてたから、久しぶりにゆっくりできる。そんなことを思った私は、そのまま、深く眠ってしまった。



……カァーカァーカァー

「んん?」

目が覚めたら、夕方。どうやら、数時間寝ていたらしい。真っ暗になる前に、噂の扉を開けようかな。
部屋には、扉が3つほどある。どの扉かは分からないが、端から開けることにした。

1つ目、違う。洗面台。
2つ目、違う。クローゼットみたいなやつ。
3つ目、違う。押入れみたいなやつ。

あれ……? 全部違うな。私はもう一度開けることにした。

1、2、3……やっぱり全部違う。それなら、、、

3、2、いちぃ……!?
その瞬間、どうやら私は気絶したらしい。