とはいえ、香織にあんな言い方をされたのは気になったらしく、帰宅すると着替えもそこそこに、通学鞄にしまってあった紙袋を取り出して開けてみた。
「…これって」
中には箱におさめられた翡翠のペンダントトップと、きれいな字で書かれた手紙があった。
「るなちゃんへ」
差出人は駿平の母親からである。
「この度はこんなことになって大変驚いていると思います。ショックをお察しいたします」
という書き出しで、
「本来ならお通夜の席で渡したかったのですが、人目もあったので、あなたに渡してもらえるよう香織ちゃんに託します」
確かに通夜の日、るなはずっと泣いていてどうにもならず、香織がそばで世話を焼きながら、記帳から焼香からあれこれ香織に面倒をかけていた。
「このペンダントトップは、駿平が合宿先の糸魚川で、貯めていた小遣いとアルバイト代で、あなたへ渡すために買ったのだそうです。なくさないように寮母さんに預けてあって、その寮母さんから、駿平とあなたのことを聞きました」
るなは泣きながら手紙を読み続けた。
「息子があなたのことをずっと思っていたことを知り、これはあなたへ渡すべきだと思い、形見分けとしてお渡しいたします」
読み終わると、るなは部屋が暗くなるまで泣いていたが、
「…私、国立でライブする」
小さく口に出した。
「駿平、私頑張るから見てて」
るなはペンダントトップをチェーンに通し、つけてみた。
「…うん」
るなは、清々しい眼差しをしていた。