その頃。

 部室は無明の闇のような重い気が、澱のようにわだかまっていた。

「るながあんなんじゃ、六本木も紅白もどうなるか分からないよ」

 るなは二人いるリードボーカルの一人でもある。

 しかもハモれるのが強みで、

「スクールアイドルでもハモれるんだって、そしたら絶対誰もバカになんかしない」

 普段はそんな強さがある。

 そのるなが、である。

「でも本番まで…何日ってレベルだよね」

 ひまりが立ち上がった。

「…私、ソロでボーカルやる。るなには今まで助けてもらってばっかりだったから、今回は私がるなを助ける」

 後に引く気はない、と言わんばかりの顔をした。

「るなには私が話すから」

 この日、部室にるなは来ていなかった。

 帰りにひまりが、学校から歩いてすぐのるなの家に立ち寄ると、

「るな、入るよー」

 ひまりはノックしてからドアを開けた。