アイドル部が代替わりしてしばらく過ぎた頃、るなのスマートフォンにひさしぶりに駿平から連絡が来た。

「サッカーの全国が決まった」

 るなは「おめでとう。勝てるといいね」と返した。

「決勝まで行って、るなを国立競技場に必ず連れてゆく」

「そのときには、必ず私を国立に連れてってね」

 サッカーの全国選手権は成人の日が決勝で、国立競技場が決勝戦の会場である。

「るなもスクールアイドル頑張れよ」

 るなの支えになっていたのは、いうを俟たない。

 どうやらるなへ、駿平は淡い想いは持っていたらしかったが、

「るなが歌ってる姿をテレビとかで見てると、そんな気持ちはあいつの迷惑になるから、捨てなきゃダメなのかなって」

 と、香織にだけは打ち明けていた。

 香織は何となくどちらの気持ちも理解できただけに、

「なんかさ、ベタなんだけど切ないよねぇ…」

 映画の車寅次郎のような言い回しであったからか、だりあに至っては「それを言っちゃあお閉めぇよ」と切り返したのだが、るなや駿平をからかっているのではなく、

「笑いに昇華してあげないとさ、悲しくなるから」

 だりあの言葉を聞いていたひまりは、泣きそうになっていた。