だりあの千葉家は、函館五名家の一つである。
本人によると八月生まれなので、だりあと名付けられたらしい。
実家が近い二年生メンバーの今村英美里によると、
「武家屋敷みたいな大豪邸」
とのことで、話によると幕末の箱館戦争のとき、近くで遭った銃撃戦の際に飛んできた流弾の痕が、客間の柱にある。
「先生の実家とえぇ勝負じゃけねぇ」
可愛らしくレースをカスタマイズしたカーディガンを制服の上に羽織った、二年生メンバーの郷原優子が言った。
優子の生家も、地元の広島ではまぁまぁ知られた造り酒屋だが、さすがに旧大名家だの何だの…となると話のレベルが変わる。
「でも優ちゃん家で出してるみかんゼリー、めっちゃ美味しかったなぁ」
優子の家では限定品ながらみかんゼリーも販売している。
入部が決まった際、広島の優子の実家から挨拶の贈答品として三箱ほど贈られてきたのだが、あまりにも美味かったのか最後はジャンケン大会まで開かれるほどの争奪戦が繰り広げられた。
「あれ果汁100%じゃけね」
最近は本州から越境入学で来る学生も増えたので、だりあのような道内の遠隔地や、優子のような本州組のための寮も発寒中央に出来た。