かいつまんで話しますが、と清正は、

「教育指導要項というのは、子どものありとあらゆる権利を守るために定められたもので、これが公立私学問わず日本の教育の基本となっています」

 さらに、と続ける。

「これには子どもの主権を認め、出来る限り保護者は子どもの主張や権利を尊重しなくてはならないとされてあります」

「だから何と?」

「今村さん、あなたは英美里さんの主張や権利を尊重していますか?」

 母親は言葉に詰まった。

「うちの学校には外国からの留学生もいます。仮にその留学生の母国政府から、日本では子どもの権利を守れない親と学校があると指摘されたら、あなたはその問題の責めを負えますか?」

 理詰めで平静ながら、完膚なきまでに叩きのめすような物言いをした。