体育祭の最中に警察が出張るなど前代未聞である。

 結局は誤解もほぐれたのだが、

「とにかく連れて帰ります」

 母親は一点張りで聞かない。

 担任も説得し切れずに困じ果てたとき、東京での仕事から戻って来た清正を担任が見つけると、

「嶋先生、今村くんのお母さんがどうしても彼女を函館に連れて帰るって、聞かないんです」

 泣きつくように走り寄ってきた。

 折しも清正は東京での情報番組でコメントを求められた際、

「例えば高校野球やサッカーのように、スクールアイドルにも全日本連盟のようなものを創設すれば、子どもたちの夢が広がるのではないかと思ってまして」

 と発言したばかりで、その物議も冷めやらぬ中での帰道である。

「通学が不可能なら、うちには通信制があるやないですか」

 たった一言したたかに放言し、一瞬返す単語すら見つからず唖然としたが、

「…そういうことではありません!」

 母親が言い返した。

「因みに今村さん、あなたの言動は教育指導要項に抵触していますからねぇ」

 母親は顔色を失った。