重たい空気が部屋を支配してゆくなか、
「いちばん売れそうなのは、ひまりかるなだけどさ」
香織が言った。
「あとは優子ね」
英美里は、秋から優子がラジオのレギュラー番組を広島で持つことを聞いている。
「私と英美里は…」
「コンビ組んでお笑いやる?」
「容易く言わないで」
香織は一笑に付した。
確かにファンの間では谷間の世代と呼ばれ、
「みな穂先輩に隠れてるけど、イリス先輩なんか海外公演したりしてるしさ」
カホンからパーカッションの世界に入ったあやめは、様々なアーティストと組んでツアーに行ったりする、その道では知られたパーカッショニストとなっていた。
「でもさ、イリス先輩みたいに努力したら、私たちも上に行けるかな?」
「…夢だけは持っとこ」
英美里は香織の頭を軽くポンと撫でた。