来ていなかったのは雪穂の他はお天気キャスターになって毎日生放送がある桜庭ののか、それと就職して京都でライターとなっていた長内藤子(とうこ)である。

「久しぶりに藤子ちゃんに会えるかなって思ったけど、何か新作アニメのストーリーの〆切があるらしくて」

 新人ライターながら文学賞の受賞歴がある藤子は、すでに一年目から三本の長篇アニメの原作者となって、新作も秋にはパイロット版の放送が決まっている。

 アニメ事情に詳しいマヤによると、

「でも藤子ちゃんのアニメってさ、ただ明るいだけじゃないから、大人が夜中についつい観ちゃうんだって」

 確かに春まで放送していた『ふりさけみれば』は、不倫が出てきたり元カレのダークな話が出てきたりと、あまり子供向けな内容ではない。

 すると千波が、

「それでね、昼の再放送をうちのおじいちゃんが観てるらしくて、おばあちゃんが『藤子ちゃんに何とかならないかって伝えといて』って」

 もうすぐ古希なのにね、と千波はクスクス笑い出した。