夏フェスの朝。
小樽の合宿施設から直行で、石狩の会場まで全員で移動すると、早速スタンバイを始めた。
「まさかのトップスタートだし」
十五時スタートの、まさかの一番最初でオープニングのパフォーマンスとなる。
開場は十時。
その前から音合わせをしたり、衣装のチェックやらフォーメーションを確認したり…と、出場メンバーはてんやわんやである。
薫は、まだリハビリが終わっていない。
テーピングした右足に負荷をかけない程度に、茉莉江や長谷川マネージャーとともにタイムスケジュールを点検したり、手続きの確認をしたりしていた。
「薫ちゃん、チャンスはまだあるから大丈夫だよ」
みな穂が薫を気にしていたらしく、ときどきリハーサルの隙間を縫ってやって来る。
あまりに頻繁に来るので、
「部長、ステージ戻って下さい。逆にこっちが心配になってきます」
薫にたしなめられると、みな穂は後ろ髪を引かれるような顔でステージに戻って行った。