それまであまり付き合いのなかった先輩の一人である優海が、このとき薫には身近に感じられたようで、
「プロに向いてないって…いつわかったんですか?」
と訊いてみた。
「私の場合は同期にすみれと雪穂がいて、すみれは読モから事務所行ったりしてすでにプロだったから格が違うのはわかっていたけど、いちばん衝撃だったのは雪穂が撮影のとき、私は女優ですって思い込めば簡単ですって言われたときかな」
リラ祭のポスター撮りのときのことである。
「私にはあの発想はなかった。だから、これは次元が違うんだって思った」
薫は真剣な眼差しで優海を見た。
「それで、これは卒業したら何か身に着けないとダメだってときに、たまたま先生が片方失明して、医療ってスゴくカッコいいなって」
優海は薫の頭をポンポンと軽くなでた。