優海は藤子から聞いた話をした。

「頑張るって、本来は年甲斐もなく無理な力を出すって意味なんだって」

 だから私は頑張らない、と優海は笑った。

「それからはね私、激励するときには無理しないでねって言うようにしてる。無理さえしなければ、少なくとも大怪我はしないかなって」

 優海はだりあが持って来た麦茶を飲んだ。

「あとはね、変に焦って我慢して練習しないこと。これは一応、医学部にいる立場だから言っとくね」

「…ありがとうございます」

 うちの部って、変わってるでしょ──優海は笑った。

「普通ならこんなときに離脱して、とか言われそうなもんじゃん」

「はい」

「でもね、うちの部は澪先輩の頃からそうなんだけど、基本は楽しむことな訳ね。私は最初それは違うって思っていたんだけど、自分自身が楽しく笑顔でいられないのに、見てくれる人が楽しくなかったら話にならないよねって」

 これはそうだと思った、と優海は悟りを明かした。

「だから、プロ並みにキレッキレのバッキバキに踊れるのも大切なんだけど、無理をして怪我なんかしたら、それこそ元も子もないよね」

 だから私はプロに向いてないって分かって、進路を変えたんだ…と、優海は今まで誰にも明かしてなかった話をした。