合宿も終盤に差し掛かった頃、夏フェスのフォーメーションがおおかた決まった。
「今回は薫がいない分、私たちが薫の分まで良いパフォーマンスをして、早く薫に戻って来てもらえるようにしよう」
るなの提案で、メンバー全員で薫の激励会を開くこととなった。
一年生メンバーで手宮のホームセンターで飲料やお菓子などを買い出しし、合宿施設へ帰ってくると準備を始めた。
薫は少しは元気を取り戻してはいたものの、
「こんなタイミングで靭帯だもんなぁ…」
包帯の巻かれた右足を、半ば恨めしそうにじっと見つめたりもしていた。
そこへ。
「陣中お見舞いだよー」
やってきたのは、夏休みで北海道へ帰って来ていた優海である。
医学部に入っていた優海はひと目見るなり、
「…薫、もしかして靭帯?」
薫はうなずいた。
「藤子ちゃんのときは捻挫だったけど、あれであんまりダンスできなくなったんだよなぁ…」
優海は藤子の捻挫の話をした。
「だけど最後は全国大会で優勝できたし、やっぱり諦めたらダメなんだよね、人生ってさ」
しかし。
優海は頑張れとは言わない。