翌日から薫は、茉莉江のサポートに回ることになった。
日々消費される洗剤や日用品のレシート管理、帳簿の記入、洗濯物の回収など…意外と忙しいことに薫は驚いた。
「こうした裏側って、きっとみんな知らないと思う」
茉莉江がレシートを束ねながら言う。
「私と結婚する前は、彼一人でやっていたみたい」
美波はこういうの苦手だからね、と茉莉江は、コーチでかつてのクラスメイトでもあった美波の弱点を明かした。
「でも美波がコーチになっても、こうした事務方の作業は彼、させなかったんだよね」
「どうしてですか?」
「アイドルに生活臭は要らんやろ、って」
清正の知られざる一面ではあろう。
それでね、と茉莉江は続けた。
「今でこそ長谷川さんもいるし私もいるから楽になったけど、以前は誰もやらないから、部費の計算が大変だったみたい」
茉莉江は懐かしむように笑って、
「薫ちゃんケガしなかったら多分、こんなこと知らないままだったかもね」
茉莉江は薫の頭を撫でてから、
「私が妊娠しにくい体質だって分かってから、アイドル部を自分の娘のように考えてるみたい」
薫は涙ぐんだ。
「…なんか私って勝手だなって」
「いいじゃない、女の子は少しだけわがままな方がモテるからあれでいいって彼も言ってるし」
少し薫は考え方が変わったらしい。