そこへゆくと。

 アイドル部で真剣にダンスやボーカルを目指してきた薫や優子とは、自ずと感覚が変わる。

 薫や優子が心血を注いで特訓してきた振り付けを、

「こんな感じ?」

 などとだりあは初見で何となく覚えて、数分練習したらモノにしてしまう。

 もっとも薫や優子からすれば、たまったものではないのだが、こればかりは天賦の才としか言いようがない。

 翔子はそれはないが、それでも覚えは早い。

 一方の翔子は転勤族の娘で、クラリネットは吹けるが友達は少ない。

 物怖じもなく明るいのだが、

「うちな、人見知りって悟られるの嫌いやねん」

 などと言い、逆にお喋りに振る舞って本心を明かさない癖がある。

「せやから、ダーリャみたいな友達が出来たら、転校したくなくなるかも知れへん」

 時折ふと見せる影が、一年生ながら人気者になる要因でもあったらしい。

 そこへたまに、だりあと同じ一年生のさくらが加わるとトリオになって、ときたまワチャワチャとふざけることもある。

「あんたたち、ちゃんと練習しなさい!」

 たまに美波に怒られて、しおしおとなる日もあった。