とはいえ恋愛話となると、妙なテンションになるのもこの年齢期ならではの特徴でもあろう。
「同年代の男子ってだいたいガキンチョだからさ、ついちょっと大人な男子に目が行くよね」
ひまりが言った。
「私は、普通に結婚して普通に暮らすのがいいな」
ひまりの家は小学校の四年まで手稲にあった。
それが創成川の再開発で建ったマンションへ引っ越して、中等部へ通うようになって、るなと再会を果たしている。
「私はやりたいことがあるから、結婚とかはまだ考えてないけどさ」
でも確かまだアイドル部で結婚した人いないよね、とるなは言った。
「いくらなんでも、先輩が先でしょ」
自分たちの歳を考えれば妥当な意見であろう。
むしろ結婚願望はひまりよりるなのほうが強く、
「私は卒業したら、早く彼氏見つけて結婚したいなぁ」
るなの両親は学生時代に知り合って、就職を機に結婚、母親が二十三歳のときにるなが生まれている。
「だから早い結婚っていいらしいよ」
近いところでは茉莉江が早くに結婚し、今では旧華族の奥方様である。
ただ清正と茉莉江の結婚はかなりいろいろあったようで、
「先生の親戚とか説得するのが大変だったみたい」
無理もないであろう。
たかだか三万七千石のちいさな大名家とはいえ、安土桃山時代から続く家なのである。
「そりゃ北海道まで逃げたくもなるわ」
最終的には茉莉江が妊娠したので、いわば強行突破で乗り切ったらしかった。