だけど、と翠は顔をあげた。
「私、昔から軽はずみなところがあって、だから今回も…やっちゃってさ」
みな穂だけでなく、メンバー全員にまで迷惑をかけてしまったことを悔いていたのか、
「だから私、事務所も辞めたし…家も引き払ってきた」
ここまで素直な翠は二人とも初めて見た。
「…自殺だけはすなよ」
「それだけは先生、大丈夫」
「これからどうするの?」
「とりあえずママの実家が帯広だから、そこに行こうかなって」
「…無理だけはすなよ」
「先生、ありがと」
先生の抹茶美味しかった、と翠は無邪気なスマイルを初めて見せた。
それから清正が書斎に行き、リビングが茉莉江と二人になると、おのずと話柄は生徒会時代の話になった。
「翠ってさ、強がりだったよね」
茉莉江は翠が実は寂しがり屋で、強がりで、責任感が強すぎるが故に、他人に弱みを見せたがらない性格であることを、生徒会で一緒に運営してきて知っている。
「私が失敗するたびに、会長に代わりに謝りに行ってもらって…」
翠は再び涙ぐんだ。
「本音を言うとね、あなたが会長に無投票で決まったとき、ちょっと不安だったの。この子は一人で何でもやろうと突っ走るから、大丈夫かなって」
だけど私は引き継いだらいなくなるし、と茉莉江は翠を気にかけていた。
「だからあなたがアイドル部の件で大変だったときも、もっと素直に気持ちを伝えていたら違ったのかなって」
茉莉江の言葉に、翠はうなだれて泣いていた。
「あなたは根は頭のいい子で、決して悪い子じゃないんだけど…」
茉莉江と語らううちに、夜が白んできた。
「帰るね」
「何かあったら、連絡してね」
茉莉江と翠は、そうしてこの日は別れた。