金曜日の夕方、空いている講堂での記者会見がセッティングされた。
進行は長谷川マネージャーだが、みな穂は清正に向き直ると、
「私が一人で行きます」
どこか覚悟を決めた様子である。
「鮎貝、自分なりの言葉で話せ。それだけや」
直前に言ったのはそれだけである。
「これより、ライラック女学院アイドル部に関する一部報道に付きましての記者会見を始めさせていただきます」
長谷川マネージャーからは、
「まず、部長の鮎貝みな穂から説明があります」
長谷川マネージャーは続けた。
「鮎貝部長は未成年で時間的な制約があります。したがって同じ質問が重なりました時点で質問は終了となります」
まずは説明を、と促されるままみな穂は一連の報道について、
「あくまで私はニュースでしか知らないのですが」
と言いつつ、簡潔に応えてゆく。
メモを取りながらみな穂は記者の話を聞いていたが、
「私は彼女とは深い付き合いがある訳ではないのですが」
みな穂は前置きをした上で、
「でも彼女が小さなトラブルを起こしたとき、彼女は髪をバッサリ切って、泣きながら謝って反省していた姿も見ています。なので、私は報道しか知らないのですが、何か事情があるのかなとは思います」
少し潤んだ、黒目がちの眼差しで真っ直ぐ応えてゆく。
ネット中継では「みな穂部長カワイイ」「みな穂は俺の嫁」「あんな部長なら給料みんな注ぎ込んじゃいます」などというコメントで埋まった。
ネット中継は、部室でもメンバーが集まって見ている。
「意外に大人から人気あるんだ、うちの部長」
ふと薫がもらした。