着替えが終わると、現役メンバーがいる楽屋へ挨拶に向かう。
「失礼しまーす」
第二期卒業生の長内藤子です、と名乗ると楽屋は騒ぎになったが、
「部長の鳴瀬里菜です」
里菜が挨拶した。
「私のこと…分からないよね」
「藤子先輩、準大賞おめでとうございます!」
全員から祝福を受けた。
とにかく関係者が多いので、次々挨拶をして回ってゆくと、
「久しぶりやの!」
振り返ると清正がいた。
「先生、辞めちゃうんですか?」
「来年度から、総監督兼任で副学院長や」
めんどくさいことやらされることなったわ、と清正はボヤいた。
「先生は、アイドルって好きなんですか?」
藤子は気になっていたことを訊いてみた。
「…自分じゃなんとも思っとらなんだけど、嫌いではなかったんやろな」
清正は照れ笑いを浮かべた。
「アイドルなんてのは、壊そうと思えば隙間だらけで他愛のないもんや。せやけど作り上げてゆこうと思えば、さまざまな労力と、犠牲と、熱情がないとあかんから手間かかる訳で、自分から苦労したい人でないと、アイドルとして人をスマイルになんかでけへんのとちゃうかな」
こんな手間のかかるもんはないでぇ、と清正はおどけてから、目線を遠くへ投げ遣った。