クリスマスの朝、藤子は京都駅から新幹線に乗って東京まで出ると、昼過ぎには国立競技場の関係者用の入口で入構証を提示して中へ入った。
移動中、街はあちこちにツリーが飾られ、カップルがしあわせそうに闊歩し、タクシーのラジオからは『アイドル部のクリスマスソング』が流れてきた。
「今日アイドル部のライブだから、国立競技場のあたり混むらしいですよ」
運転手は語った。
すでに今朝から現役メンバーや卒業生は、集まってリハーサルや、フォーメーションのチェックを始めている。
「あ、藤子久しぶり!」
まず藤子を見つけたのは唯である。
「京都じゃしょっちゅう会ってるのにねぇ」
道内組もさっき着いた、と唯は楽屋となっている待機スペースに藤子を案内した。
「藤子ちゃんが来たよー!」
唯の声に一斉に溜まりはざわめき始めた。
「藤子ちゃんって、ホンマにこの世にいてるんや」
翔子の毒舌に藤子は「たまに来ないとそう言われるから来た」と返した。