さて。

 十二月十五日、この日は藤子の文芸大賞の発表日で、

「藤子ちゃん取れるかなあ」

 メンバーの誰もがドキドキと胸を高鳴らせていた。

 ノミネートされた『夢と知りせば』はアイドル部時代の北海道を舞台とした物語で、優海から聞いた様々な話などがベースとなっている。

「よく聞いたら優海の家って、結構波瀾万丈なんだよね」

 それで書いてみる気になったらしい。

「ただね…今回はちょっと自信ないんだ」

 藤子は珍しく弱音を吐いた。