藤子の格闘は並大抵ではなかった。

 まず授賞式のときに貼られた「天才文学少女」というレッテルと、戦わなければならなかった。

 駄作は出せない。

 そのためまずかなりの数の資料を読み込み、分析をして生み出されたのが『ふりさけみれば』であった。

 写真部に所属する女子高生が不倫の関係に落ちながらも、北海道での全国大会を目指すというセンセーショナルなストーリーは、コミック化されたあとアニメ化され、ヒロインに片想いしたままサブキャラ・匠が亡くなると、

──匠ロス。

 という現象まで起きた。

 これで地位を確立した藤子だが、

「ここからは一本も外されなくなって、プレッシャーが半端じゃなくてさ」

 他日、澪に語った言葉がそれであった。