ともあれ。
時間が来た。
周りに生徒たちが集まっている、大きく広げられた和紙の上に、大筆を担いだ薫と墨入りのバケツを手にしたみな穂、そして標準サイズの筆と墨バケツを持った香織が揃った。
役割は、薫が大文字を書き、手熟れている香織は小文字を書く。
みな穂は薫をサポートする。
「だって薫のほうが上達早いし…」
どこか、みな穂らしい役回りである。
「それでは、書道パフォーマンスです」
アナウンスとともに持ち場に分かれる。
アイドル部のメンバーたちは、ギャラリーにまぎれながら、心配そうに眺めていた。
「ハッ!!」
合図とともに、タルカスのeruptionのオーケストラがかかる。
「ハイッ!!」
薫が大筆で、まず一画目を入れる。
やがてスルスルと、字があらわれ始める。
みな穂がバケツを差し出すと薫が大筆に墨を足す。
そうして一文字ずつ何やら書き終えると、次は香織が何やら文字を書いてゆく。