萌々香を気にかけていたのは由梨香も近いものがあって、

「ほら、あの子いわゆる妹キャラじゃん」

 よく泣きそうになりながらも健気で、走り込みに至っては、いつも最後を萌々香が走っている一方で、由梨香は中学まで陸上部で長距離を走っていたから、いつも先頭で他を引き離して走る。

「由梨香、早過ぎやって」

 翔子がこぼすと、

「追いつかれそうになると、つい引き離しちゃうんですよね」

 癖のようなものであろう。

「私も由梨香みたいに早く走りたい」

 萌々香はこうしたときは実にハッキリしていて、

「どうしたらいい?」

 と由梨香に早く走れるか訊いてくる。

「普段なら自分で考えろって言っちゃうんだけど、相手が萌々香だと教えちゃうんだよねぇ…」

 つい甘やかしてしまうのである。