リラ祭初日。
みな穂、香織、薫の三人による書道パフォーマンスは、リラ祭の開祭式の一環として行われる。
着物に袴姿の三人が支度をしていると、
「それやと裾が捌けへんやろ」
清正はそう言うとゼスチャーで、
「股立を取るって言うんやけど、そうしたら裾踏んづけんで済む」
と、みずから股立を取る振りをした。
見様見真似でやってみると、確かに裾捌きが楽になった。
「ま、えぇやろ」
清正はそのまま去っていった。
「…先生っていつもあんな感じなんですか?」
薫が訊いた。
「前よりは話すようになったけど、だいたいあんな感じかなぁ」
みな穂は答えた。
部員からすればかなり、清正は風変わりではある。
毎日部室には顔も出すし、練習の様子も美波と並んで見ているが、あまり指示らしい指示は出さない。
しかも。
ほとんど怒ったりもしない。
それでいて、いつも何かを考え込んでいるようで、よく分からない顧問ではある。
みな穂は最初から何も気にしたことがなかったが、それが薫や香織などの後輩たちには、不思議だったようである。