英美里は堰を切ったように、ひまりと理一郎の件の経緯を語り始めた。

「あの子が辞めるときに、ひまりから手紙が来たの」

 そこには馴れ初めから付き合うまでのいきさつ、更には退部の際の覚悟が綴られてあって、

「翔子はさ、このあと誰ともひまりと同じように恋に落ちたりしないって言い切れる? 私は…悪いけど言い切れない」

 ひまりの覚悟を知ったとき、英美里はすでに国立を諦めるつもりでいたようで、

「ひまりだって、本心は辞めたくなかったはず。けどあの子は、自分で自分を裏切り者だって責めてた。…それでも翔子は、ひまりを悪く言える?」

 翔子は、目に涙を浮かべていた。

 泣くまいと、歯を食いしばっているようにも思われた。

「…そうやったんや」

 翔子はその場に、ぺたんと座り込んだ。

「あれは誰が悪い訳でもない。ひまりが自分の人生を決めたの。それを、誰も責めたり悪く言ったりなんかは出来ない」

 もしかしたら、ひまりは強がっていたのかも知れないと翔子は感じたらしかった。