週末、萌々香が体験レッスンの見学に来た。

 相変わらずの厳しい腕立て伏せやら腹筋やらで、萌々香にやらせてみたが数回も保たない。

「これじゃあ、ねぇ…」

 美波はかぶりを振った。

「…萌々香ちゃん、無理じゃったら無理せんでえぇんよ」

 優子が寄り添う。

「…大丈夫です」

 目を回しながらも続けようとする。

 倒れた。

「…萌々香ちゃん!?」

「…まだまだ」

 フラフラになりながらも、いかにもか弱そうな細い手足を動かして、まだ腕立て伏せをしようとする。

 再びピクリとも動かなくなった。

「萌々香ちゃん、…萌々香ちゃん!!」

 さすがにたまらず、優子が美波をビンタした。

「…こげなスパルタ式の軍隊みたいな拷問までして、あんたぁいったい何処ば目指しよる!!」

 それまで温厚そのもので、誰も聞いたことも見たこともなかった優子の形相に、美波は頬を押さえたまま呆然としている。

「これで萌々香ちゃんに何ぞ遭ったら、美波先輩の責任じゃけ…あんたぁ首洗うて待っちょれや!!」

 任侠映画の啖呵のような優子のド迫力の台詞に、その場にいたメンバー全員が固まった。

 幸い萌々香には何事もなかったが、何日かして美波は清正に呼び出されて、始末書を書かされた。