明くる日。
前に部室をうかがうように見ていた生徒と、優子は再会した。
「あのときの…」
「…はい」
消えそうな返事である。
「…おぼえとってくれたんじゃね。ありがと」
優子は満面のスマイルと柔らかい広島弁で、彼女の手を握り、
「うち、アイドル部の副部長で郷原優子。みんなからは優ちゃん言われとるんよ」
彼女は小さな声で、
「…こ、ここ小清水萌々香です」
緊張でかなりどもりながら、自己紹介をした。
「萌々香ちゃん言うんか…ほいじゃ、愛称はももちゃんじゃね」
優子は田舎育ちだけに、人に垣根を作らない。
「いきなり入部いうのも、なかなか勇気の要る話じゃけぇ、まずは見学だけでもして行ってみんさいや」
はい、と萌々香は素直に答えた。
優子が鍵を開け、誰もいない部室へ案内すると、
「うちらアイドル部は普段みんなでここに来て、ミーティングしたり振り付け見たりしよるんよ」
ダンスの練習は図書室の脇の階段を上がった先の屋上であること、みんなで走り込んだりダンスを練習したりして、年間で学童保育やらグループホームやら、または地域のイベントなども含めて、数十公演こなしていることを優子は説明し、
「やってみたくなったら、うちにいつでも言いんさい。体験レッスンも見られるけぇ」
パンフレットと用紙を一先ず渡しておいた。