一方で、清正も今度のスキャンダルは監督不行き届きとメディアやTwitterで叩かれていた。

 そうした中で清正は満月の写真を添えて、

「かくばかりめでたく見ゆる世の中をうらやましくやのぞく月影」

 とだけ書いたコメントを出した。

 これは少し解説が要る。

 もともとの典拠は三十六歌仙絵巻にある藤原高光の「かくばかり経がたく見ゆる世の中にうらやましくも澄める月かな」という和歌をもじった大田南畝の狂歌で、

「みながめでたく暮らしている世の中を羨ましそうに月も眺めている」

 という意味と、

「このようにおめでたい人がいる世の中を、うらやましいフリをして見ている月であることよ」

 と、ふたつの解釈がある。

 もしかすると、清正の解釈は世間に対し、アンチテーゼ的な意味合いのこもったメッセージであったのでは…とも思われる。

 とにかく。

 この意外な方向からの発言にバッシングは止まり、

「まぁ(かわ)しただけやけどね」

 清正は泰然たるものであった。

「ひまりみたいのが出たら、真面目にやっとるのが浮かばれへん」

 翔子からは不満も出たが、

「そうやって自由にものが言える部活動やから、うちのアイドル部を目指す子たちがおる」

 強みと弱みは紙一重、と清正は翔子を諭した。