このときのひまりの凄みは、そのまま部屋へ戻るなり相部屋の菜穂子に、
「ちょっと身内の件で急用できたから、先に私帰るけど、心配しないで大丈夫だから」
とだけ言い残し、すでにまとめてあった荷物を手に、みずからタクシーを呼んで学校へ行き、その日のうちに通信制への転籍届を出してしまったところであった。
あざやかというより他ない。
「…ひまり、そこまで悩んでたんだ」
るなはひまりをどうしても責められなかった。
全体に知れ渡る頃にはひまりの姿はなく、いちばん最後に報告を聞いた清正も、
「ワイがもう少し早く気づいてたら、何とかなったんかなぁ」
としか言いようがなかった。