早速。

 週末に札幌駅で待ち合わせたみな穂と薫、香織は大通公園の近くにあった、香織が書道部にいた頃から行きつけの画材屋で練習用の墨や紙を買い込み、部室へ持ち帰ると、

「まずは字の書き方なんだけど」

 と、下書き用の新聞紙を拡げながら、レクチャーを香織が始めた。

「ポイントは大きく三つ。まず右上がりに書くこと、次は石に刻むように止めとかハネとか意識すること、あとは手先で書かないこと」

 そう言うと香織は、立ったまま机に向かい、一気に文字をしたためた。

 見ると「薫」とある。

「あとはこれで体に覚えさせてゆくだけ。それと、払いは手首でなく肘を固めて、肩で払うイメージね」

 練習をみな穂と薫が始めると、まるでアイドル部が書道部に変わったような墨の芳しい香りが広がってゆく。

「墨にはお香が混ぜてあるから、癒やしの効果もあるんだよねー」

 香織の指導を受けながら書いてゆくうち、薫はダンスのようにリズムで覚えたのか、三十分ほどで字がみるみる綺麗に仕上がっていった。

「先輩、少し肩の力が入り過ぎかな」

 指摘されて、みな穂は力を抜いてみると、ぎこちなさが抜けて良くなった。