ひまりはもう心を確固と決めてあったらしく、

「…今まで、ありがとうございました」

 深々と英美里に頭を下げた。

 背を向けた。

「…待って」

 英美里は呼び止めた。

「…そこまで覚悟していたなら、何で黙ってたの?」

「逆に訊くけど、裏切り者の言葉を英美里は信じられる?」

 英美里の目から、涙がハラハラとこぼれてゆく。

「私は裏切り者の言葉は信じない。私が今の英美里の立場なら、何を言っても言い訳だって聞く耳を持たないと思う」

 自身が仲間を裏切ってしまったことを、ひまりは痛ましいばかりに気づいている。

「…英美里、短い間だったけどありがとう」

 ひまりは再び背を向けると、今度は振り向くことなく離れた。