見つかった、と分かった途端のひまりは、このときある程度のシミュレーションをしていたのか、すでに肚が据わっていたものか、
「…彼氏じゃないよ」
「よかった」
英美里は安堵した顔をした。
「彼氏なんかじゃない、あれは私のフィアンセ」
ひまりの一言に、英美里は脳天から岩でも投げつけられたような衝撃をおぼえた。
大問題ではないか。
「…ふ、ふぃ、フィアンセ?!」
英美里は腰から力が抜けた。
「英美里、私アイドル部辞める。隠したのも悪いし、抜け出して逢ったのも私のワガママだし、何より恋愛厳禁のルール破ったんだし。謝って済む問題じゃないし、きっとみんなから非難されるのも分かってた」
ひまりは、このときが来たと見切ったのか、悟り切った物言いをした。
「だから私は辞める。歌もダンスもすべて辞める」
ひまりは決然と言った。