このあと明け方近くまで、ひまりは理一郎とのしばらくぶりの逢瀬をし、

「これで合宿終わるまで大丈夫ってぐらいデートしたから、もうワガママは言わない」

 笑顔でひまりは部屋へ戻った。

 髪留めを外してポーチにしまい、誰にも見られないよう警戒しながら朝を迎えると、何食わぬ顔で日常を過ごした。

 ひまりも、人目を気にしながらも上手く振る舞ったと思っていた合宿の最終日、

「ひまり、男と会ってた?」

 後ろ袈裟に斬るように背後から声をかけたのは英美里であった。

「急にどうしたの?」

 ひまりは身構えた。

「…夜中に抜け出して、赤いバイクの人と抱き合ってたよね?」

 たまたま英美里はのどが渇いたので、起きて自販機で麦茶を買って、戻ろうとしたときに見たらしい。

 ひまりは、顔色が変わった。

「仮に彼氏なら、退部なんだけど…」

 それでも英美里は、ひまりを信じたかったらしい。