るなとひまりは同じ中等部でクラスも隣同士、謂わば互いのことをよく知る間柄でもある。

「…ひまり、つらくない?」

 るなは駿平の件がある。

 頭ごなしに咎めるようなことは言わなかった。

「私は最後あんな結果になったけど、だからひまりはハッピーエンドであって欲しくて」

「るな…」

「でも、黙ってるのはしんどいよね」

 るなは想像がつくらしい。

「だけどアイドルは、みんなの偶像だから恋なんかしちゃいけないんだよね…」

 るなは、胸を十重二十重に引き裂かれそうになるぐらい、ひまりの気持ちが手に取るように分かるだけに、

「私たちってさ、アイドルじゃなかったらこんな苦しくなかったのかな?」

 それは答えのない疑問のように、ひまりには思われた。

 数日後、再び部室を気にしていそうなそぶりのツインテールの彼女を優子は見かけたので、

「あの…こないだの?」

「はい」

 消え入りそうな声である。

「夏休みは合宿があって部室に来られんけぇ、夏休み明けに見学したくなったら来てみんさい」

 優子の優しげな広島弁のおかげか、ちょっとはホッとした様子であった。