拍手の中カーテンコールまで終わると、

「では行ってきます」

 入れ替わりで、だりあの落語の出囃子が流れてくる。

「長年やりたかった大ネタをかける」

 といって、だりあが語り出したのは奇しくも夫婦の人情噺である「芝浜」である。

 だりあの「芝浜」はギャル嫁にアレンジされたもので、かなり前から稽古を積んでいるのは見かけていた。

「それにしても、落語とはね…」

 すでに何人かの噺家から弟子入りの話が舞い込んでおり、

「何年かしたら貴重な体験になるのかな」

 舞台袖でひかるは眺めていた。