リラ祭はるながサックスを覚えた翔子とドラムの出来る一年生の里菜と組んだバンドのセルフカバーライブ、だりあの落語、薫とさくら、優子のダンスパフォーマンス、英美里と香織、菜穂子の三人によるウクレレバンドの演奏…と演目が決まっていた。
ひまりたちのミニミュージカルも、だいぶ仕上がってきている。
「ごめん、リラ祭のリハが佳境なんだ」
理一郎にはLINEで説明してある。
「無理するなよ、ひまりならきっと成功する」
どこまでも優しい理一郎に甘え、ひまりは胸が詰まりそうになっていたが、それでもステージの日は近づいてくる。
「ね、ひかる」
「ん?」
「たまにね、私…あの人のこと世界中に叫びたくなる」
ひまりは平素、理一郎をあの人と呼ぶ。
「こんなにもつらいなら世界中に向かって叫んで、楽になりたくなる」
「ひまりちゃん…」
ひかるは何も言えない。
「だけど、そんな事やったらどうなるか分かってるから、必死になって踏みとどまってる」
みずから選んだのかも知れないが、ひまりは敢えて道が茨だらけであることを承知の上で、身を削り退路を絶ち、一命を賭して恋をしているのだろう…とひかるは理解するより他ない。