リラ祭の演目を決める時期が来た頃、ひまりはひかるや由梨香と組んで、ミュージカル風のショートステージをすることにした。
「若葉の翳り」
という恋愛もので、由梨香が選んだものであったのだが、ひかるは台本を見て腰が抜けそうになった。
誰にも知られないように大恋愛をしている令嬢のヒロインが、その愛を貫くために、すべてをなげうつ内容になっていたからである。
「私がヒロイン演じたら洒落にならないね」
ひまりは、ひかるにだけこっそり小声で言った。
よりによって、ともひかるは頭を抱えたが、もう決めたものは仕方がない。
「由梨香が選んだんだから、ヒロインは由梨香で決まりね」
ひかるは由梨香に演らせようと仕向けた。
「私、ひまり先輩でこれを見たいんです」
ミュージカルが未経験の由梨香からすれば、場数も踏んでいるひまりが適役なのは、既定路線のようなものであろう。
結局、ひまりが受け入れた。
「頑張るしかないよね」
ひまりは何かを悟ったような眼差しをした。