そうしてある程度貯まったタイミングで小型二輪を取り、親戚の家の倉庫に眠っていたスーパーカブを譲り受け、暇を見て手直ししてから、ひかるは乗るようになった。

 そんな平日の放課後、部室の前でアイドル部の看板を眺めている生徒を、ひかると優子は見かけた。

「うちが話しかけてみるけん、待っちょってや」

 優子は話しかけてみた。

「…あの、もし?」

 彼女は無言で挨拶したあと、優子と少しだけ話をしてみた。

 しばらくして彼女は去った。

「…何か、見学してみたいって言うてたんやけど、声が小そうてあんまり聞き取られんかった」

 優子は残念そうに言った。

 土日の練習で、ひかるはカスタマイズしたスーパーカブで部室まで通うようになり、

「ひかる、ライダー目指してるの?」

 さくらや薫には冷やかされたが、ひまりだけは嬉しそうに、

「今度タンデムさせて?」

 と言った。

「ひまりちゃんは何ともないの?」

「うん」

 ひまりはイタズラっぽく笑顔を返すと、

「彼と乗ったことあるから大丈夫」

 と明かした。