部室のドアが開いた。
一瞬よく分からなかった。
清正の隣には、ショートカット姿のパンツスーツを着た女性が立っている。
「今日から教育実習でお世話になります、関口澪です」
「…部室、変わってへんやろ」
メンバーは全員、鳩が豆鉄砲を食らったような顔になったが、
「…ここの初代部長だったんだよ」
部員全員、顔色が変わった。
「伝説の…澪先輩?!」
アイドル部を同好会から築き上げ、基礎を築いたあの関口澪その人である。
「そうそう、この本棚スプレーで先生と塗ったっけ」
現在でも使われている部室のピンクの本棚を見て、澪は懐かしくなったらしい。
「いつか先生になって戻って来ようって、ずっと思ってた」
メンバーは呆気に取られていた。
清正が英美里を手招きして、
「今の部長の今村英美里」
優子は少し、席を外している。
「唯の次の次だから、部長としては四代目?」
「はい」
英美里は緊張で紅潮している。
「でもみんな私のことなんか知らないよね…私が三年生のときに藤子が二年生で、雪穂が一年生だもん」
次第に、とんでもない人が来たという事実が分かってきた。
「ののかに後で教えてあげなきゃ」
英美里は驚きで目が回りそうになった。