ミカン畑の坂を降りて海が開けた先に、中学校はある。
「ここがうちの中学」
調べると生徒は三十人ちょっとで、全員が地元の子だという。
「ほじゃけ、うちが北海道行く言うたときは、うちの集落じゅう騒ぎになって、紅白のあとはよう分からん親戚じゃいう人からのメールが増えた」
それでも時たま部室にミカンが大量に届くのは、
「そりゃ阿川のおじさんが送ってきよるけぇ」
阿川のおじさんとは、優子の実家の近所のミカン農家であるらしく、
「小さい頃、親が仕込みで忙しいいうたらおじさん家でご飯食べたり面倒見てもらったけぇ、まるで姪っ子みたいにうちにいろんな物送ってきよるんよ」
優子の原点を見たような気がした。