蝦夷(えぞ)山桜(やまざくら)は満開を迎えている。

 この日、約一年弱ほど先送りされていた、嶋清正と妻の茉莉江の挙式が、ホテルに併設されていたチャペルで執り行われた。

 茉莉江のウェデングドレス姿に、教え子でもあったアイドル部部長の鮎貝(あゆかい)みな穂は思わず息をのんだ。

 クラシックバッスルドレスと呼ばれる、まるで貴婦人のような気品のある、華麗な姿をしていたのである。

 手には控え目なブーケ。

 可愛らしいティアラに、レースのベールがあしらわれた様子は、みな穂が見ていても美しいものであった。

 いっぽう。

 清正は和装である。

 もとが旧華族、というのだからそうしたものなのかも知れない。

 武家の礼装でもある裃姿で、日頃はシンプルなスーツ姿なだけに、それなりの恰好をすると、そこは生まれ育ちが出る。

 それにしても。

「やっぱり違うね」

 清正が裃を着けると、やはり殿様らしい風格はあらわれるものらしく、そこを参列していた卒業生の関口澪は言った。