*
カイと出会ったのは、5歳のとき。
その日は一日中、近所の友達と遊んでいた。
鬼ごっこをしていたときに、転んで立ち上がれなくなって、砂浜に一人、置いてかれた。
日が沈みかけていた。
夜の海は暗くて怖い。
しかも、雨が降ってきた。
早く帰りたいけど足が痛くて帰れない。
私はとうとう泣き出してしまった。
その時、どこからともなく彼がやってきて、傷の手当てをしてくれたんだ。
「お兄さん、だあれ?」
「お兄さんはお兄さんだよ」
「名前は?」
「名前はないなぁ」
「名前ないの?」
「君の名前は?」
「さおり!」
「じゃあ、さおりちゃん、俺に名前つけてよ」
「えー!いいのー?!」
その頃にはもう、足の痛みなんか忘れて、すっかり元気にはしゃいでいた。
「うーんっとね。あ!じゃあこれにしよう!カイ!」
そう言って、落ちていた貝殻を拾い上げてみせた。
「カイ、か」
「うん!お兄さんの名前は、カイ!」
「いい名前だね」
これが、私とカイの出会いだった。
*
その後、私はカイに会うために一人で砂浜に行くようになった。
カイは、次の雨の日にやってきた。
そして、自分の正体を教えてくれた。
「俺はね、実は人間じゃないんだ。海に住んでいて、海に雨を降らせて、海を荒れさせてしまう、“あやかし”なんだよ」
「あやかし?」
「うん。あやかし。だからね、俺がここに来るとどうしても雨が降っちゃうんだ」
「そっかぁ」
「それから、俺の姿は沙織にしか見えてないんだ」
「どうして?」
「俺が自分で姿を見せないようにしてるの。ほら、だって俺は雨を降らせる悪い奴だから、みんなに嫌われていじめられちゃうから、ね」
「あたしは好きだよ」
「ん?」
「カイ、優しくて楽しいから好きだよ」
「ありがとう」
でも他の人には嫌われちゃうから、パパやママにも俺のことは言っちゃダメだよ、と言われた。
だから、カイのことは誰にも話してない。
今でも。
カイと出会ったのは、5歳のとき。
その日は一日中、近所の友達と遊んでいた。
鬼ごっこをしていたときに、転んで立ち上がれなくなって、砂浜に一人、置いてかれた。
日が沈みかけていた。
夜の海は暗くて怖い。
しかも、雨が降ってきた。
早く帰りたいけど足が痛くて帰れない。
私はとうとう泣き出してしまった。
その時、どこからともなく彼がやってきて、傷の手当てをしてくれたんだ。
「お兄さん、だあれ?」
「お兄さんはお兄さんだよ」
「名前は?」
「名前はないなぁ」
「名前ないの?」
「君の名前は?」
「さおり!」
「じゃあ、さおりちゃん、俺に名前つけてよ」
「えー!いいのー?!」
その頃にはもう、足の痛みなんか忘れて、すっかり元気にはしゃいでいた。
「うーんっとね。あ!じゃあこれにしよう!カイ!」
そう言って、落ちていた貝殻を拾い上げてみせた。
「カイ、か」
「うん!お兄さんの名前は、カイ!」
「いい名前だね」
これが、私とカイの出会いだった。
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その後、私はカイに会うために一人で砂浜に行くようになった。
カイは、次の雨の日にやってきた。
そして、自分の正体を教えてくれた。
「俺はね、実は人間じゃないんだ。海に住んでいて、海に雨を降らせて、海を荒れさせてしまう、“あやかし”なんだよ」
「あやかし?」
「うん。あやかし。だからね、俺がここに来るとどうしても雨が降っちゃうんだ」
「そっかぁ」
「それから、俺の姿は沙織にしか見えてないんだ」
「どうして?」
「俺が自分で姿を見せないようにしてるの。ほら、だって俺は雨を降らせる悪い奴だから、みんなに嫌われていじめられちゃうから、ね」
「あたしは好きだよ」
「ん?」
「カイ、優しくて楽しいから好きだよ」
「ありがとう」
でも他の人には嫌われちゃうから、パパやママにも俺のことは言っちゃダメだよ、と言われた。
だから、カイのことは誰にも話してない。
今でも。