でも。
卑怯なのは私だ。

宗田くんの優しさに甘えてズルズル返事をはぐらかしている。
いい加減、はっきりさせないといけない。

そうは思うものの、私は宗田くんのことが好きなのかどうなのか。
自分の気持ちがどこを向いているのか、自分自身が迷子なのだ。

私は宗田くんのことが好き。

うん、好きは好きだと思う。
だけどもしかしてその気持ちは、吊り橋効果なんじゃないかって思ったりもする。

私の黒歴史。
入社したての頃、設計課の高野主任に可愛いだなんだとほだされてお付き合いをした。
とっても優しくて、私も大好きになって幸せいっぱいだったのに、別れは突然やって来た。

高野主任、奥さんいるよ。

その一言が疑惑になり、そして真実で。
幸せだと思っていた恋愛はただの不倫だった。

幸い私は騙されていた方なので、仕事はやめずにすんだけれど、一部の人たちからは風当たりが強くなり好奇な目で見られたりもした。
それが辛くて、なるべく人と関わりたくないって思うようになった。

黒ぶちメガネをかけるようになったのもその頃。
現実を見たくない。
メガネというフィルターを通して見ることで、一歩引いたところにいられる気がしたんだ。