関東高等学校弓道大会予選会のルールは、最初に一チームが二十四射を行い、的中数の多い上位十六チームを決める。上位十六チームはもう一度二十四射を行い、最初の二十四射と合算した総的中数で順位を決める。上位四チームが埼玉県の代表として、関東大会に進めるという仕組みになっている。
橘と和解した後、道場に戻ると控えの順番が回ってきていた。
準備を念入りにしていた高瀬や古林の顔は、自信に満ち溢れている。僕も二人と同じ気持ちだった。
今日は僕達がずっと目指してきた最初のゴール。
埼玉県には草越高校男子弓道部がいる。
その印象を植え付けるのにはもってこいだ。
「入ります」
前射場の岩月Aチームがゆっくりと道場内に入っていく。それに続いて僕達も入場の準備をする。
「入ります」
「「はい」」
高瀬の掛け声に僕と古林は応える。
僕達の声を聞いた高瀬は笑みを見せると、ゆっくりと射場に入っていった。
すり足で一歩ずつ、控えの座る椅子の所まで進む。
僕達が歩いている途中も、試合は続いていた。
的に中るたびに「よっしゃー」と各校の生徒や観客が歓声を送っている。
練習試合の時にも同じ場所で試合をした。だから緊張はしないと思っていた。
でも、そんな安易な考えではだめだと直ぐに気づいた。
椅子に腰を下ろしてから、徐々に身体が震えはじめた。
これが試合なんだと改めて実感させられる。
僕は真横に視線を移した。隣に居る古林はいつもと変わらない表情をしている。
高瀬の様子は僕の位置からだと見えなかった。
でも、立が始まると直ぐに様子を窺えるはず。
目を閉じて深呼吸をする。
大丈夫。
このメンバーで多くの練習をしてきた。
周りに比べたら、練習量は少ないかもしれない。
それでも、どこの高校にも負けないチーム力があるはず。
僕達は廃部の危機を乗り越え、この道場で試合ができているのだから。
「起立!」
掛け声と同時に目を開けた。そのまま立ち上がると、一歩前に足を踏み出す。
「始め!」
合図を皮切りに、足踏みをして射る準備に入る。皆が一斉に矢番え動作を行う。
先に打起しに入ったのは岩月Aチームの大前、橘だった。
先手必勝を心掛けているのか、高瀬よりも倍のスピードで打起しに入っていた。
でも、これは驚くことではない。
橘と和解した後、道場に戻ると控えの順番が回ってきていた。
準備を念入りにしていた高瀬や古林の顔は、自信に満ち溢れている。僕も二人と同じ気持ちだった。
今日は僕達がずっと目指してきた最初のゴール。
埼玉県には草越高校男子弓道部がいる。
その印象を植え付けるのにはもってこいだ。
「入ります」
前射場の岩月Aチームがゆっくりと道場内に入っていく。それに続いて僕達も入場の準備をする。
「入ります」
「「はい」」
高瀬の掛け声に僕と古林は応える。
僕達の声を聞いた高瀬は笑みを見せると、ゆっくりと射場に入っていった。
すり足で一歩ずつ、控えの座る椅子の所まで進む。
僕達が歩いている途中も、試合は続いていた。
的に中るたびに「よっしゃー」と各校の生徒や観客が歓声を送っている。
練習試合の時にも同じ場所で試合をした。だから緊張はしないと思っていた。
でも、そんな安易な考えではだめだと直ぐに気づいた。
椅子に腰を下ろしてから、徐々に身体が震えはじめた。
これが試合なんだと改めて実感させられる。
僕は真横に視線を移した。隣に居る古林はいつもと変わらない表情をしている。
高瀬の様子は僕の位置からだと見えなかった。
でも、立が始まると直ぐに様子を窺えるはず。
目を閉じて深呼吸をする。
大丈夫。
このメンバーで多くの練習をしてきた。
周りに比べたら、練習量は少ないかもしれない。
それでも、どこの高校にも負けないチーム力があるはず。
僕達は廃部の危機を乗り越え、この道場で試合ができているのだから。
「起立!」
掛け声と同時に目を開けた。そのまま立ち上がると、一歩前に足を踏み出す。
「始め!」
合図を皮切りに、足踏みをして射る準備に入る。皆が一斉に矢番え動作を行う。
先に打起しに入ったのは岩月Aチームの大前、橘だった。
先手必勝を心掛けているのか、高瀬よりも倍のスピードで打起しに入っていた。
でも、これは驚くことではない。