お姉さんが高校生になったころ、好きな人ができたけれど傷痕が気になって告白できない、と悩んでいるのを知った。当時中学生だった塩見くんはお姉さんになんとか勇気を持ってほしいと思い、傷を隠す方法を調べ始めた。

「ネットで調べたり、学校の先生に訊いたりして。そうした結果、コンシーラーというメイク道具で隠す、という方法に辿りついたんです。確か、女優さんの記事を読んだんだったかな……。その人も、コンプレックスだった傷をメイクで隠して、女優デビューしたそうなんです」

 そして、お姉さんの誕生日。塩見くんはお小遣いを握りしめて銀座の百貨店に足を運んだ。広いフロアにいくつものブランドが、華やかさを競うように軒を連ねる様子にも、コスメカウンターに女性がひしめきあう姿にも最初は圧倒されたらしい。

「そりゃあ、いきなりデパコスを買おうと思ったらそうなるわよ。しかも、なんで銀座?」
「銀座に売ってるものだったら間違いないと思って。今思えば、なんでドラッグストアに行かなかったんだろうって思いますけど」

 塩見くんが苦笑する。中学生のころの彼は、今ほどの器用さをまだ兼ね備えていなかったんだなと思うと、微笑ましい。

「でも、そのおかげでうちの会社に出会えたんです」