「そういえば、塩見くんってどうしてうちの会社に入ったの? 私は学生時代からメイクが好きだったからだけど、男の人ってどういうきっかけなのかしらって気になって」
化粧品会社って、男性は『なんとなく』で就活するものじゃない気がする。女性みたいに日常的にメイクをしていないぶん、なにか特別なきっかけとか、目的があって志す人が多いんじゃないだろうか。
そしてそれが塩見くんにも当てはまっているなら、彼のきっかけを知りたい。これは、単純な興味としてだけど。
「ああ、そういえば話していなかったですね。姉がいるっていうのは以前話したと思うんですが、化粧品に興味を持ったのは姉がきっかけなんです」
「お姉さんが?」
塩見くんは、つまんでいたパエリアの小皿をテーブルに置いて、姿勢を正した。なんとなく、身を入れて聞き届けなくてはいけない予感がして、私も同じようにする。
「はい。姉には、額に傷があったんです」
塩見くんのお姉さんは、小さいころジャングルジムから落ちて、額を縫う大怪我を負ったそうだ。そのときの怪我が跡になって、成長してからも残ってしまった。
「額なので、普段は前髪を下ろして隠していたんですが。でも、ふとした瞬間に見えるじゃないですか。姉はそれを極端に嫌がっていました」
化粧品会社って、男性は『なんとなく』で就活するものじゃない気がする。女性みたいに日常的にメイクをしていないぶん、なにか特別なきっかけとか、目的があって志す人が多いんじゃないだろうか。
そしてそれが塩見くんにも当てはまっているなら、彼のきっかけを知りたい。これは、単純な興味としてだけど。
「ああ、そういえば話していなかったですね。姉がいるっていうのは以前話したと思うんですが、化粧品に興味を持ったのは姉がきっかけなんです」
「お姉さんが?」
塩見くんは、つまんでいたパエリアの小皿をテーブルに置いて、姿勢を正した。なんとなく、身を入れて聞き届けなくてはいけない予感がして、私も同じようにする。
「はい。姉には、額に傷があったんです」
塩見くんのお姉さんは、小さいころジャングルジムから落ちて、額を縫う大怪我を負ったそうだ。そのときの怪我が跡になって、成長してからも残ってしまった。
「額なので、普段は前髪を下ろして隠していたんですが。でも、ふとした瞬間に見えるじゃないですか。姉はそれを極端に嫌がっていました」