セットでいただいたシャンパングラスに注ぐと、細かい泡が立ってとてもキレイ。琥珀色の液体を通しておつまみを見ると、現実を忘れそうだった。

「なんだかリッチな気分。部屋着でいるのが申し訳ないくらい」
「リッチなメニューでも、気取らずに食べられるのが宅飲みのいいところじゃないですか。いつも通り楽しんでください」

 気取らず、か。そうえば二次会の軽食はおいしそうだったけれど、あんなことがあったせいかあまり味を感じなかった。パーティードレスでレストランに行くよりも、部屋着で塩見くんと飲んでいるほうがずっと楽しい。

 シャンパンとジンジャーエールで乾杯をして、いそいそとクラッカーを手に取る。

「最初は、どれにしようかしら」

 ペーストにしたクリームチーズとイカの塩辛を和えたもの、細かく刻んだトマトとバジル、アボカドディップ。サーモンのマリネやかぼちゃサラダ、生ハムもある。

 事前に作り置きしていたと言っても、これだけの種類を用意するのは手間だっただろう。私だったら、イカの塩辛をそのまま食べて終わりそうだ。

「ん~、このクリームチーズと塩辛、すごく合うわね! 初めて食べる組み合わせだわ」